19' 1/16  刃物研究/削ろう会にとっての損失

 

 訃報 .         尾上さんが亡くなられた。

 

   心から悔やまれる。



削ろう会関係の方はご存知の方も多いと思いますが、

刃物研究の巨人です。

 

     心から悔やまれる



  正直、一回しか会った事ない。

最初は、「誰やろ、コノ人?」

でも、馬鹿みたいな豊富な刃物に関する知識に圧倒された、

削ろう会大会の時の夜に尾上さんを10人位で囲んで

色々教えて頂いた。

色々な話しを皆で聴いて楽しかった!

 

日本刀を二つに切断した断面の様子の写真が特に印象に残ってる、

「こんな断面なん n!? なんですのんコレ?  どんな意図がありますのん?」

めっちゃ面白かった!(嬉!)

炭素量とか焼き入れ具合とかの話し、

硬さの違いの在る断面や刀鍛冶の奥深さに関心した。

 

   少し話は逸れるが、去年の京博での「京のかたな」展は、

出展数全200件中、国宝19件、重要文化財71件の〈 二百 振り振り祭り!〉

だったけど、ヤッパリ尾上さんの知識を携えて観る方がオモシロかった。

(改めて、尾上さんは研究の為、古い日本刀を真っ二つに切断してる男で、

日本刀は切るほうで、切られるものでは無い。)

 

  うろ覚えで恐縮やけど、

尾上さん、「鉋で削る時の刃先の温度が400°程(※???)になる」

  皆、「えェー !??  ホンマ~?」

  僕、「どんな計測方法ですのん?」

尾上さん、「リトマス試験紙みたいな感じに、温度によって変化するモノを使用した。」

「 なるほど!」    皆の衆は関心して納得。

ソコに居た鍛冶屋の反応は気の毒だった、

「焼き入れ温度とかの温度管理はどないなるネン!」  (笑)

他人事なので笑ろたけど、、       何やろ? (笑)

鍛冶屋という職業は  ”沼” やんケッ!(笑)

その後もその事について尾上さんの考えなんかを聴けた!

 

   其に、サラッと「スプリング 8」も使って調べたみたいで、(はぁ? 笑)

僕の金属顕微鏡など足元にも及ばず、顕微鏡の成れの果てを

感じた。(其処まで行ったら アホ やでぇ!笑 )

 

   資料の”ほんの一部”を拝見させて頂き、

尾上さんの知識の、”ほんの一部”をご教授して頂き、

楽しい時間が過ぎた。

 そして最後に尾上さんに質問してみた、

僕、「膨大な尾上資料、其に尾上さん自身が … .   知識の塊やぁッ 」

         「取り合えず ズ ...  ..    オレに判るように〈 五七五 〉でまとめてくれ!」

尾上さん、「  … ..      . 」 (苦笑い)

   みんなの反応も早く、おもっクソ笑われて一同「それ無理やわぁ!笑 」

僕、「アカンのか … 」

  そんな想い出が懐かしく頭を過った。

 

   その後も分からない事があって電話やけど、僕の尾上刃物相談所へ

アドバイスを受けた、数日後には関連資料を送付して頂いた、

有り難かった。

 尾上さん、「自分なりに感じた事をまとめて行けばイイ。」

そんな言葉も残っている。

 

  そういえば、何時か?尾上さんの以前の職場の後輩の方が書いた刃物に

関する論文について著者と直接電話でお話しした事があったんですけど、

尾上イズムが継承されていなかった事に残念に感じた事がありました。

(尾上さんが居たのに、なんでやネン?)

この事について改めて思い返した事がある、

・「研究者には勝てないが、研究者には実践的な事や現場の事を

感じ採る研究は難しい」

・「職人など現場の人間は生活を掛けて道具と取り組んでいる。

しかし研究の専門家では無いので奥深い研究は難しい」

  双方共によく感じる事だが、

「どんな研究も専門性が強くニツチな視点では限界がある。」

隙間を埋める幅広い知見を持った感覚でないと限界がある。

 

尾上さんは、僕達の前へ現れるタイプの人だった。

 

  尾上さんに聴きたい事はまだまだ有った

尾上さんの協力がまだまだ必要だった

正直勝手に死なれると困る。

 

僕みたいな若僧でも凄く親しげに接してもらえたぁ

話し相手になって欲しかった、

「まだ生きて居られましたか? (笑) 」

こんな始まりでまた、元気なお声を聞きたかった。



    刃物研究に於いて大きな損失となった …

 

      ご冥福をお祈り致します。





                                                                         敬具